片耳だけ補聴器をつけている。日本ではそのような状況が長く続いています。
しかし片耳だけ補聴器をつけていると補聴器の効果がうまく上がらなかったり、思わぬ弊害が生まれてしまいます。
特に片耳のみ補聴器をつけた時に効果が出ない例がこちらです。
- 片側からの言葉が聞き取りづらい
- 騒音が多いと聞き取りづらい
そして思わぬ弊害というのが
- 補聴器をつけていない耳の言葉の聞き取り能力が下がってしまう。
過去に、ほかの補聴器専門店で補聴器を片耳で購入して、それ以来5~6年経過して新しい補聴器を購入しようと考えて当店にいらっしゃいました。両耳で補聴器を装用するようにしようと思いましたが、補聴器をつけていなかった右耳の言葉の聞き取り能力は40%まで下がっており、なかなかうまく効果のでない状態に陥ってしまった方がいらっしゃいました。
その方はあきらめず補聴器を両耳で使い毎日リハビリを続けてくれています。
もし片耳だけ使い続けて、気持ちを改めた時に思うような結果が得られない状態になってしまうと知っていたら、
それでもあなたは片耳に補聴器をつけますか?真実を知って間違いない選択をしてください。
片耳だけ補聴器をつけてもいいケース
タイトルをみて不安に思った方もいらっしゃると思います。
片耳だけ補聴器を利用している人でも、片耳装用ではいけないケースと片耳装用でいいケースがあります。
今回は片耳装用ではあまりお勧めしない聴力の人に向けたものですので、次にあげる例に該当する方はさほど関係ありません
- 片耳の聴力は正常で、片耳のみ聴こえづらい方
片耳の聴力が全体的に0~30dB以内で、反対側は30dBより大きく下がって聴こえづらい場合は、悪いほうの耳だけで補聴器を利用していただいたほうがいいです。聴力が30dB以下に下がっていない場合は補聴器の効果がありません。 - 片耳の言葉の聞き分ける力が40%以下の方
言葉の理解力を検査して片耳の言葉の理解力が40%を下回る場合は補聴器を利用しても思ったような効果が得られない場合があります。両方とも40%を下回る場合は両耳の装用が好ましい。
こちらに該当する方は片耳で補聴器を利用していただいて構いません。
もし聴力が下がってきて補聴器が必要となった場合や、言葉の理解力が低くても、もっと聴こえを改善したいと思ったときは両耳に補聴器をつけてください。両耳装用のメリットは、この後書かせてもらうので気になれば読み進めてください。
なお片耳が正常で、片耳がほぼ聞こえない状態の方はクロス補聴器を試していただいてもいいかもしれません。
クロス補聴器関連記事→片耳難聴に効果あり!フォナッククロス補聴器
最も注意が必要な聴力の方
今回の記事で最も注意してほしいのが、両耳が軽度もしくは中度難聴で、言葉の理解力がほぼ同じであったり、片耳は軽度、反対耳は中度難聴で、片耳のみ補聴器をしているという方です。
補聴器は高価な医療機器であるため、資金面できびしくて片耳のみ購入しているという方は、補聴器専門店で片耳の補聴器を勧められることもありますが、注意が必要です。
もちろん資金面は購入をする上で重要なことですので、片耳で購入していただいて構いません。
しかし時間があまり経過しない内に両耳で補聴器を使っていただくようにお勧めします。
片耳での装用でも十分に効果が出ているという方も、検討してみてください。
言葉を聞き取るには2つの能力が使われている
普段私たちが何気なく行っている言葉の聞き取りには2つの能力が必要です。
一つは音自体を聞き取る聴力
もう一つは言葉を理解する弁別能です
聴力は皆さんのなじみのある健康診断などでやるピーピー、プープーという音が聞こえたらボタンを押すという検査をやっているものです。
聴力は音の高さをどのくらいの大きさで聴こえるかというものを測るのです。
特に耳の構造に問題がないか、蝸牛という部分の音として感知できるかを測定していますので、耳に関する検査です。
補聴器には特に重要な能力です。
言葉を聞き取る力(弁別能)はみなさんはあまりなじみはないと思います。
こちらはその名の通り言葉を理解する能力ですが、これは耳の力ではなく、脳の力です。
小さい音量から大きな音量の様々な音で、あ、か、みなど言葉をひとつひとつ聞き取り答えてもらう測定します。
言葉を聞き取る力がさがってしまうと、音としては耳に入ってきているけど、言葉として理解できないという風になってしまいます。
いろいろな音量で試すのは、ちいさな音では聴こえないし、大きすぎてもうるさいだけですよね。どのくらいで言葉が一番聞き取れるかを確認するためということです。
普段の生活の会話にも測定結果と結びつきますし、補聴器にもしっかり反映されます。
耳が遠くなった時、大きな声で話してもらうとわかりやすくなるのは、あなたにとって言葉の聞き取りの力が大きい音の時のほうが発揮しやすいということです。
どちらかが足らなくなってしまうと言葉を聞き間違えたり、聞き逃したりしてしまうのです。
聴力という耳の力で音を感知して、弁別能という脳の力を使って聞き取る。私たちはそうして言葉を理解しています
補聴器の役割
あなたが補聴器をつけている主な理由は聴力が下がってしまって難聴であるからということでしょう。
なんとなく使っていらっしゃるかたもいるかと思いますから補聴器の目的を簡単な説明をしますね。
- 弱ってしまった聴力を補い、聞き取りづらい音を聴かせやすくする(弁別がしやすい音量になる)
- 脳を刺激して音を聞き取るリハビリをする
この2つが大きな目的になります。
1のほうは皆さんが一般的に思って補聴器をかう理由です。聞こえづらいからということですね。
2のほうは、皆さんが知らない目的です。聞こえていない時間が続くと脳の聞こうという力が落ちてしまいやすいのです。
音が聞こえない状態のまま時間が経過すると、言葉の聞き分ける力が下がる
聴力、言葉の聞き分ける力(語音弁別能)がほぼ左右差がないのに片耳だけ利用し続けていると、装用していた耳に比べて、装用していなかった耳の言葉の聞き取り能力は6年後には30%程度、10年程度で50%程度言葉の聞き取り能力が下がってしまうというデータがあります。
人間の能力は使わない期間が長いとうまくつかえなくなることが多いのが実のところで、
例えば計算もそうですし、文を書くのも、ずっとしていないと、うまくできないことがありますよね?
これは計算する必要がない=計算力はいらない。文を書く必要がない=文字を書く能力が必要なと判断しています。
一度衰えた能力は衰えてからの期間が短ければ回復をすることもありますが、長期間放っておくと使いづらくなってしまいます。
これは耳も一緒で、聞こえない=言葉を聞き取る必要がない。と脳では判断していますので、聴力が衰えて聞こえない機会が増えてしますと必然的に聞き取る力が下がってしまうのです。
両耳で補聴器をつけるメリット
両耳の聞こえの力を下げないためにも両耳装用をお勧めしていますが、両耳で補聴器をつけることでメリットも生まれます。
- 音の方向がわかりやすくなる。(音の定位がよくなる)
片耳だけで音を聞くと、距離感や位置がつかめなくなってしまいます。
さらに聞こえない側で会話をされると非常に聞き取りづらくもなります。両耳に装用することで聴こえづらいという範囲を狭めることができます。 - 騒音に強くなる
片耳だけで補聴器を利用していると、両耳スケルチ(雑音や反響抑える)効果が少なくなってしまいます。
両耳に装用することで片耳の状況よりも雑音や反響音を抑えることができますので、騒音下での会話がしやすくなります - 前方方向の会話が聞きやすくなります。
右耳では右側半分だけの音を聞いているわけではありません。多少ですが左側から来た音も聞こえています。
頭を回って(回折して)きた音が聞こえますから両耳でフォローしあって音を聞いています。
前方の音は両耳でより正確にカバーしているということです。 - 両耳で同じ音を聞くため音の明瞭さが上がる
左右の耳で同じ音を聞くことで重複して脳に届くため音の正確さが上がり、音が明瞭に聞き取れる確率が上がります。
両耳でかけた情報を補い合うことで正確さがあがるということも含まれます。
以上が両耳で補聴器をすることで生まれる効果です。
耳は左右で一対の器官ですから両方の条件を揃えていいただくと、より効果を発揮できるということですね。
やはり両耳で買うと高い…
両耳装用を勧めてきましたが、やはり補聴器は高価でなかなか難しいという方も多いと思います。
基本的に補聴器は両耳で買うことで割引を受けられることが多いので価格については、販売店でしっかりと確認してしてください。(当店では両耳の同時購入は割引があります。)
もし片耳だけでも購入したいという場合は、先に片耳を買って、資金が用意できたら反対耳の補聴器を購入してください。
なお片耳ずつ買う場合はしっかりと装用耳についてしっかりと確認してください。
聴力がいいほうなのか、悪いほうなのか、言葉の聞き取りやすい耳を優先するのかなどをしっかり確認してください。
先に買うのがどちらの耳でなぜなのかを知ってください。
なお片耳を買ってから、3か月程度経過してからもう片耳を購入するのが理想的です。
3か月も経つと、補聴器の扱いにも慣れているはずですので、もう片耳は苦労せず使用できます。
両耳そろえる際は両耳用の調整をしますので、それまでの不安や、不満なところがあればしっかりと相談しましょう。
もし片耳で高価な補聴器を勧められた場合は、50万円の片耳補聴器より、50万円で両耳補聴器を装用したほうがいい結果が得られる場合もありますので、なぜなのかを聞きましょう。
まとめ
補聴器を片耳で使うと安く済みますが、その分うまく使えなくて困ってしまうということもありますから、資金面と相談しながら両耳で補聴器を購入してみてください。
片耳補聴器が間違いとは言えません。
しかし間違った選択してしまうと、補聴器自体の効果が下がってしまったり、リハビリがうまくいかないというデメリットがあるのです。
自分の聴力をしっかり知って、販売する方にはどのようにするべきかを相談して補聴器を選びましょう。
ある意味では自分の耳の代わりになるものを選んでいるわけですから、納得して補聴器を選びたいですよね。
正しく補聴器を使って自分の人生を楽しみましょう。