日本の認知症患者は約462万人(2012年厚生労働省調べ)とされており、日本にとっての深刻な問題とされています。
最近の研究では認知症の危険因子として、難聴が含まれるようになりました。
難聴の早期診断と発見、そして補聴器による聞こえの補助は認知症の予防につながると考えられています。
本記事は
- 認知症について
- 難聴と認知症の関連性
- 補聴器による聴力の補助の必要性について
以上のことを説明してまいります。
ではご覧下さい。
認知症について
認知症は、様々な原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなることで、いろいろな障害が起こり生活に支障が出ている状態のことを指します。
人間の活動のほとんどを脳がコントロールしています。脳がうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。
65歳以上の高齢者の4人に一人は、認知症もしくは認知症予備軍である。
出所:厚生労働省
現在、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は推計15%で、2012年時点で約462万人に上ることが2012年の厚生労働省の調査で明らかになっています。
認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると推計されています。65歳以上の4人に1人が認知症であったり、認知症直前の状態であるという計算になります。
ここまで具体的な数字が出てくると他人事とは思えませんね。
なお2025年には認知症の患者数が700万人を超すと考えられていて、日本に住んでいる以上切っても切ることができない国民病になると考えられます。
そもそも認知症発症の危険因子とは
認知症対策の認知症施策推進プラン(新オレンジプラン)では認知症発症の危険因子に
- 加齢
- 遺伝性のもの
- 高血圧
- 糖尿病
- 喫煙
- 頭部外傷
- 難聴
などを危険に因子としています。
身の回りの環境の変化や、生活習慣の問題から、加齢や、加齢によっておこる体の変化が認知症の発症リスクにかかわる原因になるわけです。
逆手に取れば、こういった危険因子を取り除くことでリスクは下がるということです。
そして防御因子として
- 運動
- 食事
- 余暇活動
- 社会参加
- 認知訓練
- 活発な精神活動
以上が認知症を防ぐにいいとされることです。
この防御因子をと可能な限りの危険因子の取り除くことで認知症のリスクは下がると考えられており、こういった危険因子、防御因子をはじめ、さまざまな認知症対策が練られ、政府の認知症対策推進プランとして発表されています。
難聴と認知症の関連性
海外では難聴と認知症は関連があるとして学術書、論文がだされるなどしてきましたが、日本では多方面からの意見を持ち寄って詳しく議論している最中で、はっきりと関係があるとはしていません。
新オレンジプランでも危険因子に指定されるように難聴は認知機能の低下を危険性があるということで説明していきます。
難聴をする自体が危険因子となり、防御因子の部分に影響が出てしまうのが、発症のリスクが上がるといわれる所以です。
このような影響がでるといわれています。
- 音の認知能力の低下が進みやすくなる
- コミュニケーション能力の低下し、会話に参加できず孤立してしまう
- 人との会話を避けるようになる
難聴になってしまうとこのようなことが起こってしまい、認知症のリスクが高まります。
会話に参加できず孤立することは実際に難聴になってしまうとよく発生してしまうことです。
聞き間違いが増えてしまったり、何度も聞き返すうちに自信を無くし、自ら会話することをやめてしまうこと、そして周りの人びとが、会話をしても返事がないために余計な会話をしないように生活する環境自体が変化してしまうことがあります。
これが精神が低迷することにもつながり、さらにリスクが上がってしまうのです。
難聴と認知症の研究
難聴と認知症の研究が海外では行われています。
米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部
耳鼻咽喉科・頭頸部外科・老齢医学・精神衛生・疫学科を専門にされている
フランク・R・リン博士によると
2011年の研究報告で、「難聴の初期症状が悪ければ悪い人ほど認知症を発症しやすく、健聴者に比べると、軽度難聴を伴う人の方が認知症の発症リスクが3倍も高い」と報告されています。
認知症リスクの36%が難聴に起因しており、2013年に1984人(平均年齢77.4歳)を対象に行った研究調査から、健聴者に比べて難聴者の方が、難聴によって認知機能が低下する可能性が30~40%高いと報告しています。
海外の研究ではこのような結果を報告されており、難聴と認知症の関係が示唆されています。
補聴器の必要性について
難聴が認知症の発症に起因する可能性を考えると、難聴になったときの対策を考えておくのがいいでしょう。
その難聴になってしまった後の対策は補聴器による聴こえの改善でしょう。
実際海外での研究では
コロンビア大学病院(CUMC)の研究者による最新調査で、難聴の高齢者の補聴器装用と認知機能の向上には直接的な相関関係があることが分かりました。
CUMC教授のエニル K. ラルワニ博士は、「補聴器の使用は簡単なことに思われるかもしれませんが、実はとても重要なことであり、難聴者が会話やコミュニケーションの輪に入ることで、認知症を予防したり、進行を遅らせることができます。」と、発言しています。
予防面での効果
認知症予防における効果としては
- 難聴によるコミュニケーション能力の低下を防ぐ
- 難聴によって聞こえなくなるはずの音をしっかり聴こえさせ認知能力を上げる
- 会話の聞こえづらさによる脳にかかる負担を減らす
- 会話する相手の負担を減らす(会話の頻度を上げる)
防御因子となる部分をカバーできることがまず一番大きいでしょう。
会話による情報交換、社会参加には補聴器があるのとないのでは本人の負担もそうですし、積極性の違いも現れます。
周りの人は、会話が不成立になってしまうことが多い難聴者相手ですと、声をかけることを躊躇してしまうことが多いです。
積極的に会話できる状態を作ることで、自分の身の回りの環境によって引き起こされる認知症も防ぐことができます。
認知症発症後の効能
認知症になると様々なことで補聴器の必要性を感じることがあるようです。
このようなが補聴器の必要性につながります。
- 安全のため
- 被害妄想の予防
認知症になると視野が狭くなりますので、耳から入って情報というのは重要になってきます。
散歩や庭先での草むしりの際に、車の音が聞こえなくて事故にあうことや、火事や災害の際に、誘導の声が聞こえないことがあるかもしれません。
認知症に限った話ではありませんが、周囲の危険察知のためにも音というのは必要になってきます。
もう一つ認知症になった後心配なのは、認知症の周辺症状(BPSD)である被害妄想が引き起こされた場合です。
聞こえづらくなったことで、思い込みや勘違いが増え、それが被害妄想やもの盗られ妄想を引き起こしてしまう可能性があるようです。
認知症でなくても、音が聞こえないことで通常の会話もひそひそ話をされていると感じてしまうこともしばしばあるもので、認知症の場合はより考慮して補聴器を用意してもいいと考えられます。
認知症発症後でも発症前から習慣化していることは長期にわたって習慣を記憶しているとされますので、補聴器の装用は早めにするに越したことはないようです。
しかし電池切れしても気が付かないことがあるなどしますから、管理などは家族が行う必要があります。
以上のことを含めて認知症予防、認知症発症後の補聴器の必要が考えられます。
まとめ
認知症と難聴の関連性についてご理解いただけましたでしょうか。
耳鼻咽喉科学会や、日本聴覚医学会でも様々な研究や、認知症と難聴についてのシンポジウムが開かれるなど、国民病になりうる認知症に対する対策をされています。
実際加齢性難聴はどんな方でもいずれ発症してしまいます。
認知症は生活習慣や、体や、精神の変化によっておこることですから、必ず発症する病気ではありません。
ですが難聴によってリスクが高まる可能性がありますので、予防できることから始めましょう。
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