音楽で感動を与えてくれるバンドマンや、アーティストの皆さんにぜひ知ってほしいことがあります。
- 大きな音は突発的な難聴になる(音響外傷)
- 継続的に大きな音を聞くことで難聴の進行がしやすくなる(5年、10年での聴力に差が出る)
あなたが音楽活動をしていくうえで、耳(聴力)は欠かせないものというのは当然至極のご理解のことだと思います。
しかし些か耳を保護するということに関しては、なんとなくわかっているけれど行動に移せないということはありませんか?
ライブハウスでの大きな音は耳へ深刻なダメージを与えます。
耳栓をしようとは思うけど、きこえが悪くて鮮明に聴こえないから、楽しく演奏できないからしなくてもいいや。
なんて考えてませんか?私には耳が聴こえなくなるなんてないよと、自分を例外視してませんか?
正直いって音楽をやるからこそしっかりと理解して耳を守ってください。
あなたの耳は他人より優れた音感は持っていますが、他人より耐久性を持っているとは限りません。
ほんの少しのコストで10年後のあなたのライフスタイルが変わるかもしれません。
音はどう伝わるのか
あなたが音を聞いている仕組みはこのようになっています。
- 耳から鼓膜に音が届く
- 鼓膜が耳小骨に音の振動を伝える、耳小骨は前庭窓につながっており、リンパ液への振動として伝える
- 前庭窓から内耳の蝸牛に振動が伝わり、蝸牛内の有毛細胞という言われる細胞に振動が伝わる
- 蝸牛では有毛細胞の反応を電気信号にかえ聴神経に伝達する
- 聴神経を伝い、大脳辺縁系にある視床に届く、そこで音の区分をして聴覚野で音を認識している
耳ではなく最終的には脳が理解しています。
しかし大きな音によって聴力が低下するのは脳が理由ではなくほかの部位に原因があります。
それは電気信号に変えてくれる蝸牛です。
蝸牛内の有毛細胞が減ると聞こえなくなる
蝸牛は簡素に図に表すと上のようになっています。文字通りカタツムリの殻のような感じです。
蝸牛にある有毛細胞は音のピッチの違いを周波数ごとに変換し、電気信号として送ります。
蝸牛の入り口は20000Hz(20kHz)に反応します。奥に向かうにつれて周波数は低くなり、一番奥は20Hzです。
要は低い音には低い音担当、高い音には高い音担当の有毛細胞あります。
彼らには一定の数がありますが、刺激を受け続けることで消耗してしまいます。
特に大きな音では消耗が激しく、ある一定は回復するのですが、ドンドン減っていってしまいます。
有毛細胞が反応しなくなると電気信号が発せられませんから、結果として聞こえなくなります。
演奏中の音量ってどんな程度なの?
大きな音ってどのくらいが大きい音なのよ?
そうお思いの方も多いでしょう。これが音の大きさについてです。
見ての通り生のドラム、エレキギターなどは音量もかなり大きく、120dBの音量が出ています。
近くに落ちた雷と同じ音量ですから相当な音の大きさだと理解していただけますでしょうか?
それが継続的に身の回りで起こるわけですから、相当な負荷がかかることが想像できますよね?
ライブ後の耳のキーンは危険信号
ライブ後にキーンという耳鳴りがすることがありますよね?
あれって危険信号なんです。
ライブ後の耳鳴りのメカニズムを説明するとこうなります。
- 大きな音によって有毛細胞にダメージが与えられる
- 継続的に続くことでダメージが蓄積される
- 有毛細胞はダメージで麻痺して一時的にきこえが遠くなり、脳に送る電気信号が弱まる
- 脳の視床では本来聴こえるはずの音が小さいので、音を大きくしようと脳が興奮状態になる
- 過度の興奮状態になることで普段聞こえない非常に小さい音の耳鳴りが増幅され耳鳴りになる
- 一定時間が経過すると有毛細胞の麻痺がおさまり聴こえが戻ると耳鳴りは収まる
ライブ後は一定時間耳鳴りと音の聞こえづらさが起こりますが、これは有毛細胞の一時的な麻痺が原因で耳が聴こえなくなっている状態です。
一時的な麻痺ですから回復はしますが、完全にもとに戻るわけではなく、少しずつ有毛細胞は損傷していきます。
そのうち耳鳴りが日々日常で起こるようになりかねませんのでしっかり保護しましょう。
ライブハウスや、ロックフェスなどで音響外傷になるリスクがある。
ライブハウス、ロックフェスなどでは、生の楽器以上の音量でスピーカーから音が流れる可能性があります。
そういった強大音というのは、音響外傷という直接的な難聴を招きます。
先ほどの説明に合った耳鳴りを伴う聴力低下は実は音響外傷なんです。
症状が軽いので耳鳴りと一時的な聴覚障害が出る程度なんです。
症状が重いと聴力は戻らず聴こえないままになってしまします。
これは強大音によって有毛細胞が死滅してしまったのです。
今までは軽い耳鳴り程度ですんでいたと考えてください。
会場が大きくなるにつれて音響外傷になるほどの音量でやってしまうリスクは高まります。
それはモニター音の関係です。
モニターの環境も鼓膜に影響を与える
音量と音響外傷について理解いただいたところで、演奏中のモニター(返し)についても説明いたしますね。
ウェッジモニター(転がし)は足元から音を奏者に送ってあげるモニター(音の確認用のスピーカー)ですが、これの音量も難しいところですね。
ウェッジモニターはある程度の音量を出さないと、アンプや、楽器から出ている生音とぶつかることで聞こえなくなってしまいます。ですから、必然的に音量が大きくなってしまいます。そうなると音響外傷での難聴のリスクは高まります。
音量が大きいウェッジモニターを使用する場合はなるべく耳栓をして使用しましょう。こうするだけでも簡単に耳が守れます。
ライブハウスでウェッジモニターをつかっていると、よくあるのが中音とモニター音の音量インフラです。
中音が大きくてモニターが聞こえないからモニター音を上げると、逆に中音が聞こえない(マスクされてしまう)。中音を上げるとモニターが…という区繰り返しで音量のインフラが起こり結果としてものすごく大きな音で演奏してしまうという方もいます。
まずは中音のバランスをとり、音質調整して中音でも音が聞こえやすくすることでモニター音を抑えることができ、結果として音量インフラを抑えることができます。その場合はバンド全体で見直す必要があります。
もっと簡単にするならインイヤーモニター(イヤモニ)を使うことでしょう。
ウェッジモニターとは違ったモニター方法でインイヤーモニター(モニター用イヤホン)を使ってモニターしていく方法があります。
イヤホンを利用して直接耳にモニター音を送りますので、ウェッジのように音がぶつかりマスクするという心配はありませんし、耳栓をしてウェッジモニターを聞くほど音量感や、音質を損なわないのも利点です。
遮音性も耳栓以上のモデルもありますから、耳の保護にはばっちりです。
インイヤーモニター誕生の話。
ここで少し脱線しますが、インイヤーモニターの誕生の話をすこし。
インイヤーモニターの誕生はヴァンヘイレンのドラムのアレックス・ヴァンヘイレンの依頼がスタートだと一般的にいわれています。(起源はRushとかデフレパードとも言われています。)
当時ヴァンヘイレンではロックフェスなどの大きな会場でのライブが多く、モニターからは130dB以上の音量が出ていたそうです。ドラムをたたけば髪の毛が揺れるほどのモニター音がかえってきていたそうです。
そんな状態でライブをしていたので、アレックスの耳は悲鳴を上げてとてもじゃないが活動が続けられないほどになっていたそうです。
そこで耳型をとって作ったシェルに、補聴器用のドライバー(スピーカー)を入れて使ってもらったのが始まりです。
個人に合わせたオーダーメイドの耳栓とイヤホンを一緒にしてしまったんですね。
今ではカスタムIEMとかイヤモニと呼ばれて第一線で活躍するアーティストの縁の下を支えています。
10年後の自分のために耳を保護する
数万円の機材を揃えたりしている方でも、イヤーモニターや、耳栓は購入に積極的ではありません。
むしろイヤーモニターに関しては必要はまだないと宣言している人が多いように思います。
金銭面で考えてしまう方が多いようです。
はたして耳が悪くなってから数万円、数十万円の機材を使ったところで意味があるのでしょうか?
正直私もバンドマンなので昔は耳栓などの購入には積極的ではなかったほうですが、聴力のことを正しく知った今となっては、耳が悪くならないよう対策にしてから機材を買うのが正解なのではと私は思います。
10年後、20年後の自分がステージに立てるようにあなたは耳を保護するべきです。
現に音楽関連の方で聴力の低下が激しく思っている以上に早く補聴器を使い始める方が多いのが現状です。
今からでも遅くはありませんから守ってください。
一番大切なのは音を知って音楽を作れるあなたの耳なんですから。
もしカスタムIEMを作ろうとしているのであれば、カスタムIEMの耳型採取は年間3000人以上の採取を行い、カスタムIEMのことにも精通しているリスニングラボにおまかせください。
現在もたくさんのアーティストの耳型の採取を行っております。
ではアマチュアの皆さんも、プロの皆さんも将来の自分を輝かせるためにも耳を守ってくださいね!