音響外傷になる原因と治療方法に関して紹介してまいります。
音響外傷は、強大音によって引き起こされる外傷性の難聴です。かつては銃の発砲音や爆発音などが原因のことが多かったのですが、現在はその原因にも違いがあります。
※治療方法や症状についての説明をしていますが、弊社は補聴器専門店であり、診察、治療をはじめとした医療行為は行いません。該当の症状がみられる場合は、耳鼻咽喉科をはじめとした専門の医療機関にて診察、治療を受けてください。
音響外傷について
音響外傷とはその名の通り音によって外傷を負ってしまい難聴になるということです。
大きすぎる音は耳に深刻なダメージを与えてしまうので、注意すべきことなんですね。
音響外傷の原因とは
音響外傷の原因はズバリ過度に大きな音(強大音)です。
音は大きくなると音のエネルギーも大きくなって耳の奥の蝸牛にある有毛細胞にダメージを与えてしまいます。
この有毛細胞は音を感知して電気信号に変換して脳に送る役割をしている部分です。
ここに大きな音で音響ダメージを受けてしまうと一時的な麻痺を引き起こしたりします。徒競走のスタートの雷管で耳がキーンとなる現象も同じような原理です。
許容範囲を超える急激な強大音や、長時間の大きな音を浴びていると音響ダメ―ジによって、有毛細胞は減少したり、損壊して音自体を感知できなくなってしまいます。
昔は銃の発砲音や、爆発音などによる音響外傷が非常に多く、戦争に参加した人に多かったようですね。他にも落雷などの自然発生音や、工場などの機械音などが理由でした。
ここ最近では、ロックコンサートや、クラブなどの音楽イベントや、音楽プレイヤーやスマートフォンの普及によって、大音量で音楽を聞く人が増え、それによる音響外傷が増えています。
イヤホン難聴や、ヘッドホン難聴というものも音響外傷の一例といえるわけですね。
音響外傷の中でも、急激な強大音を発する爆発音などによる急性音響外傷といいます。
日常生活で常習的に大音量に曝されて起こる難聴を騒音性難聴と呼び、工場などで特定の周波数だけを聞き続けて起こった音響外傷などは騒音性難聴といわれることが多いですね。
音響外傷の特徴
音響外傷の特徴はこのようなものがあります。
- 音がこもったような感じ、音が遠く感じる
- 強い耳鳴り
- 耳に痛みを伴うこともある
- 聴覚補充現象(リクルートメント)がみられる
- 重度の症状だとめまいを伴うことがある
まず第一に感じる症状は、強い耳鳴りと共に音がこもって、遠くに聞こえるということですね。耳鳴りはキーンであったり、ピー、ウー、ボーなど様々な音程で感じる様ですね。
基本的には一時的な聴覚麻痺を引き起こしだけの留まることが多く、1~2日程度で症状は無くなり、自己修復することが多いです。
しかし日常的に大きな音に曝されている状態になると、常態化し次第に症状が重くなっていきます。
常態化することで感音難聴をもたらし、耳鳴りと耳の聞こえの悪さに加えて、有毛細胞の減少による感度異常がおこります。
対して大きな音でなくても健康な人よりも大きな音に聞こえ、音に対して過敏に反応するようになる聴覚補充現象(リクルートメント現象)が起こります。
なお急激な強大音で深刻なダメージを受けた場合には、耳に痛みを伴うことや、内耳の聞こえに関する部分だけでなく平衡感覚を司る部分にまで影響が及び、めまいなどが起こる場合があります。
音響外傷の治療方法
病院では診察後に、炎症や、神経麻痺に効果のあるステロイド剤、血液循環改善剤などを利用した治療を行う又は、星状神経節ブロック療法が想定されます。
しかし、有毛細胞自体は、新陳代謝して機能を再生することはありませんので、損傷が激しい場合は耳鳴り、難聴、めまい等症状が残ることが考えられます。
2日以上の聞こえの異変や、痛み、めまいなどがあればすぐ病院へ
音響外傷は、先に述べたように軽度の症状であれば、人体の自己修復機能により、改善する可能性が在ります。
しかし、急激な強大音や、長時間や常習的、反復するように大音量に曝されることで、自己修復を越えたダメージを受けることがあります。
2日以上強い耳鳴りと、耳がこもる感じの聞こえづらさが続く場合や、発症時から耳に痛みや、めまいを伴う場合は、直ちに耳鼻咽喉科、又は専門の医療機関で診察と治療を受けることをおすすめします。
少なからず1週間内の治療であれば、症状を改善する可能性が高くなります。
音響外傷は予防することが最善の策
音響外傷は、強大音を避ける、長時間の大音量を控えることで予防することが最も大切です。
長時間の大音量や瞬間的だが強大音が想定される状況がある場合は、イヤーマフや、耳栓を利用して耳を保護することで発生を防ぐようにしましょう。
近年の工場では、義務付けられている工場もあります。すぐに症状が出なくとも、5年~10年単位で顕著に症状が出ることがありますので、配慮していくことが大切です。
又イヤホンや、ヘッドホンなどでの長時間の音楽鑑賞による音響外傷が近年では問題視されており、WHOで議論されるほどの社会的問題になっています。
長時間で、大音量の音楽鑑賞は控えることが大切であり、できれば静かな環境で、小音量で音楽鑑賞することがいいのですが、電車などの連続的な騒音がある状況で音楽鑑賞をする場合は、遮音性の高いイヤホン、ヘッドホンを利用することがお勧めです。
遮音性の高いイヤホン、ヘッドホンを利用することで、周りの騒音に影響されづらくなり、音楽を聴いているプレイヤーの音量が控えやすくなります。
イヤホン・ヘッドホンで難聴にならないための記事も書いております。→イヤホンやヘッドホンで難聴にならないために
音響外傷と補聴器
音響外傷は、補聴器を利用して改善する場合は補充現象の考慮し、再生音量の上限制御と入力別で利得(増幅)制御ができるノンリニア補聴器を利用することが望ましいですね。
低い音だけ極端に聞こえが悪い、高い音だけ極端に悪いなど、ある特定の音域だけ特に聴こえづらくなるパターンも多いため、細かな制御をするため性能が高い比較的高価な補聴器を用意する必要性が高くなることが多いです。
又片耳のみ極端に聴力が低下してしまう場合もありますので、この場合にはクロス補聴器という特殊な補聴器を利用すると効果的です。→クロス補聴器について
通販などで販売されている簡易式補聴器では効果が見込まれず、逆に聴力をさらに痛めてしまう可能性が高いため、補聴器専門店で購入できる本格的な補聴器を使用するといいでしょう。
心配があれば補聴器相談医に相談してから補聴器専門店に相談されることがいいですね。
まとめ
音響外傷は一度なると改善は難しいものがあります。予防のためにイヤーマフや耳栓で強大音や長時間の大音量をしっかり予防するように心がけることが大切ですね。
もし、強大音などを聞いた後に、2日以上の強い耳鳴りを伴う難聴がある場合や、直後からめまいや痛みを伴う場合には、直ちに病院に行き診察を受けましょう。