クロス補聴器の購入に補助金や助成制度があるのをご存知でしょうか?
クロス補聴器の購入に各種保険は使えませんが、障がい者総合支援法や自治体がおこなう助成制度があり、条件にあてはまれば補聴器を購入するための補助金がうけられ、医療費控除もうけられる場合があります。
当サイトではクロス補聴器の購入や買い替えに利用できる補助金の申請方法・助成制度の条件・医療費控除についてわかりやすく解説していますのでご参考にしてください。
クロス補聴器の購入において、聴こえの効果や見た目はもちろんですが費用のことも気になりますよね。
クロス補聴器は価格をいちばんおさえたグレードでも、補聴器とあわせて20万円以上の価格になります。
購入時に公的な補助金がうけられれば購入費用の負担を減らすことができるので、条件にあてはまる方は利用されてはいかがでしょうか。
ここからは補聴器の補助金について詳しく解説していきますね。
クロス補聴器の補助金の対象になるのは?
メガネの購入が保険適用外であるのとおなじく、補聴器やクロス補聴器の購入に健康保険や各種保険は適用されません。
クロス補聴器や補聴器の購入に適応されるのは以下のような場合です。
- 総合支援法による補聴器の補助金の支給
- 18歳未満の難聴児童を対象にした難聴児童支援制度
- 補聴器の購入費用の医療費控除
以上の3つがおもな補聴器購入の補助・控除制度になります。
ただし、補聴器を購入すれば誰でも助成金や医療費控除がうけられるわけではなく、それぞれの条件に該当する場合に補助や控除をうけることができます。
障がい者総合支援法にもとづく補助金
障がい者総合支援法とは、障がいをもつ方が日常生活で困らないように、障がいの程度に応じた公的な支援をおこなうための法律です。
一定の難聴レベルをこえると聴覚での障害者手帳の交付対象になり、手帳と補助金の申請をすることで補聴器の購入費用が支給されます。
補聴器の補助金は、聴覚障がい者にあてはまる高度難聴・重度難聴の方や、ことばの聞き取りが著しく低下している場合にも、障がい者手帳に該当することがあります。
また、18歳未満であれば障害者手帳に該当しない聴力の難聴でも、お住いの自治体独自の補聴器の補助金を受けられることがあります。
補聴器の買い替え・購入に利用できる補助金
すでに障害者手帳をおもちで過去に補聴器の補助金の支給をうけている方は、前回の申請から5年が経過していればあらたに補助金の申請ができます。
ただし、5年が経過していても1年以内に修理費用で補助金をうけている場合は、修理の補助をうけてから1年が経過していなければ、補助をうけることができません。
過去にいつ補助金の申請をしたのかを忘れてしまった場合は、購入した補聴器店か役所に問い合わせれば教えてもらえますので確認しておきましょう。
クロス補聴器への買い替えもできます
片耳で補聴器を使っていて、もう片耳にも難聴の症状があり、聴力の低下が進行してしまった場合、通常の補聴器よりもクロス補聴器のほうが効果を期待できる場合があります。
最初の補助金を通常の補聴器でうけている場合でも、買い替えのときにクロス補聴器に変更することも可能です。
ただし、クロス補聴器への買い替えは補助金との差額が発生する場合がほとんどですので、費用の面では注意が必要です。
補助金制度を利用できる条件
補聴器の補助金の支給は、聴覚での障害者手帳をおもちの方が対象です。
基準は難聴の程度によって4段階にわけられ、症状が重ければ障害者手帳の交付対象になります。
難聴の程度
難聴度 | おもな症状 | 手帳の等級 |
軽度難聴
(25~40dB) |
小さな声やささやき声が聞き取りにくい
テレビの音が大きいといわれる |
該当なし |
中度難聴
(40~70dB) |
普通の会話が聞きづらい
自動車や自転車の走行音に気がつかない |
該当なし |
高度難聴
(70dB~90dB) |
耳もとでの大きな声でもきこえづらい
耳もとでの大きな声でも聞き間違いが多い |
70~80dB
6級聴覚障害 80~90dB 4級聴覚障害 |
重度難聴
(90dB以上) |
耳もとでの大声も理解できないときがある
生活におおきな支障がでる場合がある |
90~100dB
3級聴覚障害 100dB以上 2級聴覚障害 |
補聴器の補助金は、高度難聴・重度難聴の方で手帳をお持ちの方に支給の対象になります。
このほかにも、語音明瞭度(病院で検査することばの聞き取り)が両耳の普通話声の理解度が50%以下であれば4級の聴覚障害者に該当します。
また片耳が90dB以上の重度難聴で、もう片耳が50dB以上の難聴であれば、6級の聴覚障害者に該当します。
最高語音明瞭度によるもの | 左右どちらも最高で50%以下 | 4級聴覚障害 |
片耳が重度難聴によるもの | 片耳が90dB以上 もう片耳が50dB以上 | 6級聴覚障害 |
クロス補聴器が有効なケース
片耳が失聴に近い聴力でもう片耳にも中程度以上の難聴が有る場合は、クロス補聴器できこえの改善が期待でき、補助金もうけられる場合があります。
たとえば、右耳が90dBで左耳が50dBの難聴であれば聴覚障害6級に該当するため、手帳の申請をすれば補聴器の購入に補助金が利用できます。
このとき右耳に補聴器をつけても聴こえの改善がむずかしい場合に、左耳で右側の音を聞くクロス補聴器が効果を発揮します。
聴覚で身体障がい者手帳をおもちの方
高度難聴、重度難聴で聴覚で障害者手帳をおもちであれば、5年に一度、補聴器の補助金をうけられます。
支給される金額は以下のとおりです。
耳かけ型 | 高度難聴 43,900円
重度難聴 67,300円 |
|
耳あな型 | 高度・重度ともに 137,000円 | |
ポケット型 | 高度難聴 34,200円
重度難聴 55,800円 |
上記にくわえて医師が必要と判定した場合は、ハウリングを防ぐためのイヤモールド(耳せん)代の9000円が加算されます。
補聴器の支給は耳かけ型がキホン
補聴器で補助金をうける場合は、耳かけ型での支給が基本です。
耳あな型の支給は仕事で安全確保のためヘルメットやマスクの着用が義務づけられている方や、耳の変形などで耳かけ方の装着が身体的に困難な方、多汗症の汗が原因で耳かけ型補聴器だと故障する可能性が高い方など、特別な理由がある方にかぎられます。
耳鼻科医師の意見書が必要なことや支給決定の判定がきびしいことから、耳あな型で支給されるのは特別な場合のみと考えておきましょう。
ポケット型の補聴器は、操作がカンタンであつかいやすいので、手先の不自由なかたでもラクに使うことができます。
18歳未満の難聴児童にも補助があります
「中等度難聴児支援事業」は、18歳未満で難聴を持つ児童対象として補聴器購入費を助成する制度です。
聴覚障害による身体障害者手帳の対象とならない中等度難聴児に対し、補聴器の装用による言語の習得や生活能力、コミュニケーション能力などの向上を促進するため、補聴器購入費用の一部を助成します。事前に申請が必要になります。
例として、千代田区にお住まいの方の場合をご紹介します。
対象者
次のすべてに該当する方
- 18歳未満で、区内に住所を有している方
- 聴覚障害による身体障害者手帳を所持していない方
- 補聴器の使用により、言語の習得等一定の効果が期待できるという医師の意見を得ることができる方
- 両耳の聴力レベルがおおむね30デシベル以上である方
- 対象児童または対象児童の属する世帯員のうち、最も多い区民税所得割課税額が、46万円未満である方
助成額
補聴器購入費の9割の額を助成します(上限は123,300円)。
生活保護法による被保護世帯または区民税非課税世帯は、補聴器購入費の全額を助成します(上限は137,000円)。
中等度難聴児発達支援事業
千代田区ホームページより引用
申請に必要なものや方法など、くわしくはお住まいの役所の福祉課にお問い合わせください。
助成制度利用の流れ
障がい者手帳をおもちでない場合は、新しく手帳を申請する必要があります。
手帳の申請→手帳の交付→補装具費の申請→補聴器の支給
といったながれで補聴器の補助金が受けられます。
まずは障がい者手帳を申請する流れをご説明しますね。
障がい者手帳の申請から交付まで
聞こえに不自由を感じたら、まずは耳鼻科で診察をうけ、聴力を測定し、聴力が手帳に該当する場合は補聴器店または耳鼻科で手帳申請の方法・説明をうけて、役所へ手帳の申請にいきます。
ここからは実際の手続きについて説明します。
1.お住まいの市区町村の福祉事務所(福祉課)で「身体障害者手帳交付申請書」をもらいます。
2.福祉課の窓口で指定された病院を受診し「身体障害診断書・意見書」を書いてもらいます。
※診断料がかかる場合があります。
3.福祉事務所(福祉課)へ下記書類を提出し身体障害者手帳の申請を行います。
身体障害者手帳交付申請書
身体障害診断書・意見書
4.身体障害者手帳交付の適否について判定があり、許可が下りれば手帳が交付されます。
障害者手帳が交付されたら、次に補聴器の補助金の申請をおこないます。
※2級聴覚障害の申請のみ、ABR(聴性脳幹反応)の検査がおこなえる病院でなければ申請ができません。街の耳鼻咽喉科でABRを設置してある病院は少ないので、大きな総合病院や大学病院への紹介状を書いてもらい、検査をうけ申請をする手順になります。
補装具費の申請に必要なもの
次に補聴器の補助金である、補装具費の申請に必要なものついてご説明します。
コチラも例として千代田区の場合になります。
1.身体障害者手帳
2.最新の所得税額や住民税額を確認できるもの(千代田区税務課で確認できる場合は、閲覧同意書により、かえることができます。)
3.指定育成医療機関の意見書(18歳未満の人)または、身体障害者福祉法第15条による指定医師の意見書(判定を意見書にかえることができる人)
4.補装具の見積書(判定や意見書が不要な人・部品交換などの修理を希望する人)
5.印鑑
千代田区ホームページより引用
申請がとおれば補装具費支給券が交付されます。
この支給券を補聴器店へ持っていき、補聴器と交換してもらいます。
補聴器の補助金の申請から支給まで
補助金で補聴器が支給されるまでの流れをご説明しますね。
1.お住まいの市区町村の福祉課で「補装具費給付申請書」をもらいます。
(自治体により、申請用紙の名称が異なります)
2.福祉課の窓口で指定された耳鼻科を受診し、医師に「補装具費支給意見書」の必要事項を記入してもらいます。
3.「補装具費支給意見書」の書類を持って補聴器店へ行き、補聴器の見積書を作成してもらいます。
4.福祉課の窓口に行き、以下の書類を提出します。
補装具費支給意見書
補装具費給付申請書
補聴器の見積書
書類提出後、支給が決まれば「補装具費支給券」が郵送で送られてきます。
必要事項を記入する欄がありますが、記入方法がわからなければ補聴器店で説明してくれますので、ご安心ください。
5.「補装具費支給券」を持って見積もりを作成してもらった補聴器店へ行き、補聴器を購入します。
自治体によって書類の名称がことなる場合があります。
詳しくはお住まいの自治体に問い合わせてご確認ください。
補助金を申請すると、役所から補装具費支給券が送られてきます。見積書を作ってもらった補聴器店へ持っていき、署名、捺印して支給券と補聴器を交換します。
一割の自己負担金があるばあいは補聴器を受けとるときに支払いが必要です。
補助金といっても現金で支給されるわけではないんですね。
補聴器購入と医療費控除の手続き
補聴器は医療機器ですので、購入費用が医療費控除として申請すれば認められる場合があります。
申請の流れとしては以下のようになります。
1.補聴器相談医を受診し、必要な問診・検査を受ける
2.補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書」に必要な事項を記入し、患者に手渡す。
3.補聴器販売店へ行き診療情報提供書を提出して、試用の後、補聴器を購入。
4.診療情報提供書の写しと補聴器の領収書を受け取り、当該年度の確定申告における医療費控除対象として申請し、保管しておく(税務署から求めがあった場合は、提出します)
以上の流れになります。
※補聴器相談医とは、日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医の中で、福祉医療・成人老年委員会が作成した講習カリキュラムのすべてを履修し、認定された者です。補聴器相談医制度は、難聴者がそのコミュニケーション障害に有効な補聴器を適正に選択して使用できるように対応することを目的としています。現在4,000名以上の耳鼻咽喉科専門医が認定されています。
補聴器相談医の一覧はコチラ
耳が聞こえにくくなったので自分の判断で補聴器を購入した、という場合は控除の対象になりませんのでご注意ください。
補助金で購入できる補聴器と高価な補聴器の違い
補助金で購入できる補聴器よりも高性能な補聴器を希望される場合は、差額を支払うことで購入することができます。
補助金で買える補聴器とのちがいをまとめてみましたので、ご参考ください。
※地方自治体によっては差額で補聴器を購入することが認められない地域も一部にあります。その場合は補助金を受けた金額で、メーカーが指定した聴覚障害者支援法に基づいた機種しか選ばません。
雑音を抑制する性能
補聴器の価格でいちばんのちがいは、コトバを聞きやすくするための雑音抑制の機能です。
誰にでも高性能な補聴器が必要というわけではなく、使う環境によって必要な補聴器の機能が変わってきます。
静かな場所での会話に使うことが多い場合は、補助金をつかって購入できる補聴器で対応できますが、騒がしい場所で大人数の会話などは、より雑音をおさえる機能の高い補聴器のほうが、聞き取りが改善できます。
使う環境によってえらぶことが大切です。
チャンネル数のちがい
補聴器の性能をあらわす数字として、チャンネル数といものがあります。
デジタルカメラの画素数のようなものと考えるとわかりやすいですね。
画素数がおおければそれだけ画像の解像度があがり、きれいな写真になります。
補聴器では、このチャンネル数がおおいほど、補聴器に入ってくる音や会話を細かく分解し、より聞き取りやすい音に変換してくれます。
クロス受信機としての補聴器の性能
クロス補聴器には価格による性能のちがいはありませんが、受信機となる補聴器の性能によって聞き取りやすさがかわります。
クロス補聴器で集音した音は、最終的に受信機である補聴器をとおして聞くことになるので、補聴器のマイクの性能や雑音抑制機能が高ければ、騒がしい環境での聞き取りにも対応できるようになります。
まとめ
クロス補聴器の補助金や医療費控除についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
補聴器は高額なため、補助金や医療費控除の制度がもうけられていますが、補助や控除をうけるためにはハードルが高く、必要な方すべてに行き届いているとは言えません。
条件にあてはまる方はこれらを利用することで、補聴器の購入費用をおさえることができますので、活用されてはいかがでしょうか。
補聴器は毎日、長時間つかうからだの一部ですので、故障が多くなってくれば買い替えを検討するときがきます。
買い替えのときに補助金を利用できないかお悩みの方は、参考にしていただければ幸いです。
ご精読ありがとうございました。